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ミステリの話題

2016年10月 6日 (木)

スチュアート・パーマーの短篇

スチュアート・パーマー短篇のリストを整理しました(コチラ)。
 
昔からのミステリマガジン読者ででもないかぎり、スチュアート・パーマーといえば『ペンギンは知っていた』『五枚目のエース』の作者、という認識かと思います。
ま、そこそこのエンターテイナーではあるのだろうけれど、同時期のクイーンやクェンティンと並べたら比べるべくもない、パッとしない地味な作家……くらいにお考えなのでは?
 
いや、いや、いや、いや
そいつは大きな間違いってもんです。
 
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【[A Valentine for the Victime]扉】(The American Magazine 1954 Feb)
 
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【[A Valentine for the Victime]挿絵】(The American Magazine 1954 Feb)
 
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【MYSTERY 1934 Apr 表紙】パーマーとクイーンの名が同じ表紙に
 
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【MYSTERY 1934 Apr 目次】パーマーは[The Riddle of the Yellow Canary]、クイーンは[The Three Lame Men](『エラリー・クイーンの冒険』収録の「三人のびっこの男の冒険」)
 
パーマーといえば、ドタバタに近いユーモアに目を奪われ、パズラーとしてのレベルの高さは見逃されがち。
 
ですが、例えば「指紋は偽らず」は、めったに見られないような独創的なアイデアを、ネタを最大限に生かすプロットで描ききり、最後の一言で落とす構成は、見事の一言。
「犯罪博物館の謎」や「猿神殺人事件」は、ミステリファンならわくわくせずにはいられないようなシチュエーションで始まり、期待を裏切らない鮮やかな結末がつけられます。
「首吊り殺人事件」や「一寸の虫にも」の意外な真相は、キャラクター設計の巧みさとあいまって切れ味鋭いWHYDUNITに仕上がっていて、読後深い余韻を残します。
 
てなぐあいで、パズラー部分だけに注目して読み直してみれば、クイーンやホックにも伍する正統派、ストロングスタイルの短篇パズラーの書き手であることに気づかされるはずです。
 
このブログでウィザーズ登場作品の全作品を紹介していますので、詳しいことはそちらをご覧下さい(ネタバレはしていないつもり)
 
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【MYSTERY 1934 Jul 表紙】パーマーの[The Riddle of the Forty Naughty Girls](いたずらパリ娘の謎)の1シーン
 
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【[The Riddle of the Brass Band](いたずらパリ娘の謎)挿絵】
 
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【[The Riddle of the Brass Band](ブラスバンドの謎)挿絵】
 
私は日本版EQMMを刊行時にリアルタイムで読んでいたわけではなく、古本屋でせっせとバックナンバーを買い集めた世代です。少ない予算の中でどの号を買うべきか判断しなくてはならない……そんなとき、パーマーのウィザーズものが掲載されていれば、迷わず「買い!」でした。パーマーは、ホック登場以前のEQMMで、パズラー方面の屋台骨をささえる看板作家だったのです。
 
ま、とりあえず、パーマーは短篇を読め!ってことです
 
 
 
※今回作成のリストは、現時点で判明しているヒルデガード・ウィザーズ登場作品は網羅できていると思います。ですが『Hildegarde Withers: Uncollected Riddles』の解説によると、まだ埋もれている作品がある可能性が高いとのこと。ですので、まだ暫定的なものとお考え下さい。非シリーズものもたくさんあるのですが、ほとんど読んだこともなく、実態はよく分かりません(^^;)。この部分は100%「FictionMags Index」頼りです。

2016年9月25日 (日)

クレイグ・ライスの短篇

クレイグ・ライス短篇のリストを整理しました(コチラ )。
 
特に新しい情報があるわけではありませんので、悪しからず(^^;)。
 
クレイグ・ライスの短篇はほとんど翻訳済みですが、単行本は『マローン殺し』と『被告人、ウィザーズ&マローン』の2冊だけ。今回のリストの55作中16作に過ぎません。
『マローン殺し』には「マローン弁護士の事件簿〈1〉」とのサブタイトルがついているのですから、「〈2〉、まだ~~?」と待ち続けている方もかなりの数にのぼるのではないかと。
 
ライスの短篇は、その出来不出来以前に、あの独特の雰囲気に酔わされる部分が大きいと感じています。ですので、出来ることなら全作品を手元に置いておきたいというのがファン心理ではないでしょうか。
まだ39作残っているのですから、あと3冊はいけるはず。
「ライオンの檻に近寄るな」
Manhunt_195305
 
「最後に生き残った男」
Pursuit_195309_no1
 
ちなみに、マローンもの関する限りでは、現時点で本当に未訳といえるのは[ Dead Men Spend No Cash ]だけ。
[ Dead Men Spend No Cash ]掲載号
Suspect_detective_stories_195608
 
[ The Headless Hatbox ]は『わが王国は霊柩車』の原型中編、[ No Motive for Murder ]は『マローン御難』の原型中編なので、厳密には「未訳」と言い切れないかも知れないですが、長編化されるほど出来の良い中編なのですから、翻訳する価値はあるでしょう。
Double_action_detective_1956_no3
 
ライスの短篇は雑誌掲載のみで単行本に収録されていないものが多いので原テキストをそろえるには多少の困難がともなうかとも思うのですが、そこはそれ、当方にご相談くださればなんとかなりますので、版元様は是非ご一考下さいませす。

2016年9月17日 (土)

「American Murders」!!

「American Murders」のリストを整理しました(コチラ )。
 
…………ところで、「American Murders」って何?ww
 
「American Murders」……アメリカの著名犯罪を集めた犯罪実話本のタイトルかと思うところですよね。でも、ここ「海外短篇ミステリの話をしよう」では、全然別の特別な意味を持った言葉として使いたいと思います。
 
TVの出現によって日常生活がすっかり様変わりししまう前、映画やラジオと並んで、中流階級以上の市民の日常の娯楽の一角を、週刊/月刊のスリックマガジンが担っていたのだそうです。
現代を生きる人間が、毎週お気に入りのTVドラマを楽しみにしているように、週に一度、あるいは月に一度郵送されてくるスリックマガジンに掲載されている小説を待ち焦がれていたのだとか。

スリックマガジンといえば「The Saturday Evening Post」「Collier's」などが有名ですが、それらと同等かそれ以上の人気と歴史を誇った月刊誌に「The American Magazine」があります。1906年創刊の名門スリックマガジンだったのですが、残念なことに1956年に終刊を迎えてしまいました。

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この「The American Magazine」は1930年代半ば頃から、読み切りのミステリ・ノヴェラを掲載するようになりました(ノヴェラってのは長めの中編、あるいは短めの長編のこと)。そのコーナータイトルは「The Month's American Mystery Novel」でした。

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1986年にジョン・L・ブリーンとリタ・A・ブリーンの共同編集で傑作集アンソロジーが出ました。そのタイトルが『American Murders』。巻頭でブリーンが詳細な解説を書き、巻末には情報量たっぷりの作品リストが付されていて、資料性も高い。

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この本のインパクトがあまりに強いので、「The Month's American Mystery Novel」のことを「American Murders」と呼ぶことにしようじゃないか、という次第。

はい、私の勝手な命名ですけど、何か?
 
スリックマガジンは他にもたくさんありますし、30年代~50年代(TV時代以前ということですね)は、どこのスリックマガジンも競い合うように様々な娯楽小説を掲載したものです。でも、ロマンス小説、冒険小説、ユーモア小説などさまざまなジャンルがある中で、「The Month's American Mystery Novel」(今月のミステリ長編!)と銘打って毎号ミステリ・ノヴェラを掲載していたのは「The American Magazine」だけ。
 
実は同時期、Pulp Magazineの世界でも毎号目玉となるノヴェラを掲載するミステリ誌は多かったのですが、そうは言ってもスリックとPulpの違いというのは、とてつもなく大きい。
なにしろ原稿料が全然違います。「a cent a word」なんて言いまして、Pulp Magazineの原稿料は最低レベルで1語1セント、最高額を誇った「Black Mask」で1語3セントでした。仮に1語2セントで20,000語のノヴェラを書いたとしたら原稿料は400ドル(1950年の1円=360レートで、消費者物価指数を勘案すると現在の100万円くらい……って、悪くはないじゃんww)なんですが、ブリーンの解説によると「The Month's American Mystery Novel」の原稿料は1作品につき3,500ドルから4,500ドというとこだったようです。10倍だ!(現在の日本円で……1000万以上!!! 乱歩賞かよ!ww)書き手の気合いも違ってくると言うものです。
 
今回作成したリストを見ていただけば分かるのですが、翻訳されているものだけをみても、ラインナップは豪華というしかない。ヒュー・ペンティコーストの「もの云う子牛」「マンハッタンの殺人」「明日は昨日」、パトリック・クェンティンの「ダイヤのジャック」「大晦日の殺人」「死はスキーにのって」、ヘレン・マクロイの「人生はいつも残酷」「外の暗闇」「ふたつの影」「人殺しは誰でもする」などなど、傑作中編として名高いものばかりです。「ミステリマガジン」の前身である「日本版EQMM」を読んでいた方なら、フィリップ・ワイリーやゴードン・ギャスキルの名前も懐かしいでしょう。そして、スタウトのネロ・ウルフものの中編は、「The American Magazine」が廃刊になるまで、ここでしか読めない看板シリーズでした。
 
未訳の作品では、クェンティンの[Passport for Murder]、[Death Freight]、[The Scarlet Box]あたりがまずは気になるところでしょうか(私(=米丸)は[The Scarlet Box]だけ既読です。イタリアを舞台にした観光ミステリなのですが、クエンティンらしい中身の濃い傑作!)。他にも、ティモシー・フラーの[The Second Visitor]は『ハーバード大学殺人事件』『ハーバード同窓会殺人事件』のジュピター・ジョーンズが活躍する唯一の中編です。この他、日本ではなじみの薄い作家も多いのですが、確実に楽しめる作品ばかりのはず。1作1000万円の原稿料は伊達じゃないはずですからw。
 
いずれにせよ、「ミステリマガジン」「別冊宝石」などに翻訳されたきりで埋もれてしまっている作品、まったく翻訳もされていない作品が山ほど残っているのです。
 
というわけで、
「American Murders」は宝の山(結論w)

2016年9月 9日 (金)

パトリック・クェンティンの短篇

パトリック・クェンティンの短篇作品リストを整理しました(コチラ )。
 
クェンティンの短篇の多くは雑誌に掲載されたきりで単行本にまとめられてはいません。いや、それどころか、短篇作品に関しては情報も少なく、全貌はいまだ霧の中といった状態です。上記のリストは、現時点では最良のものだと思いますが、まだまだ埋もれた作品が眠っている可能性があります。
 
翻訳されている唯一の短編集『金庫と老婆』(The Ordeal of Mrs. Snow)を読んでおられるならばとっくにご存じのことでしょうが、クェンティンは短篇も抜群に面白い作家です。
悪意に満ちた、と言いたくなるほど冷酷な視点で人間の真実を暴き出す短篇群の切れ味はどうでしょう。そして、唯一の中編「金庫と老婆」は、金庫に閉じ込められた老婆が脱出できるかどうかを描いたヒッチコックばりのサスペンスの快作なのですが、実はその構造は、仮説がたてられ新証拠によって否定されるというステップが繰り返される典型的な多重解決ミステリと同じであり、中編の長さの中に長編5冊分くらいのアイデアが詰め込まれている中身の濃い作品で、パズラーファンも必読です。
 
ミステリマガジンや別冊宝石などで翻訳された中編・短篇も傑作・快作ばかりです。なかでも「ダイヤのジャック」「大晦日の殺人」「他人の毒薬」あたりは、なんとか入手して目を通されることをお勧めします。宣伝になってしまいますが、トラント警部補の活躍するショートショートを集めた「ティモシー・トラントの殺人捜査」やトラントとのデビュー中編「ミセス・ヴァン・ホーテンの秘密の仕事」も、密度の高いパズラーで、満足度は高いはず。我が翻訳道楽で現在も入手可能ですので是非。(翻訳道楽の作品リストはコチラ
 
いまだ翻訳されていない作品も、私が読み終えた「This Way Out」「The Wrong Envelope」「Passport for Murder」「The Scarlet Box」などの中編は出来が良いももばかりでした。既訳の中編同様「トライアル&エラー/多重解決」の構造に思いつく限りのアイデアをぶち込むというスタイルなのに、ここまでテイストの違うヴァリエーションが作れるのかと、感心させられてしまいます。どれもたっぷり楽しめたので、クエンティン掲載誌のコレクトにどっぷりとはまってしました。
本国でも、つい先頃、ダルース夫妻の登場する短篇を集めた『The Puzzles of Peter Duluth』という2冊目の短編集が刊行されましたが、まだまだ雑誌に掲載されただけで単行本に収録されていない作品が大量に埋もれているので、結局、掲載誌を入手するしかないのです。
現在、ようやく制覇率8割といったところ……。
 
余談になりますが、先日ようやく入手した「Hunt in the Dark」という中編はダルース夫妻ものでした。The FictionMags Indexの情報でも《Duluth》もの扱いされていませんし、『The Puzzles of Peter Duluth』にも収録されていません。現物を入手し、冒頭に目を通してようやくわかった事実です。こういうことがあるから、現物で確認しないといけません。ちなみに、結婚18ヶ月後で、戦争はまだ始まっておらず、2人でコニー・アイランドに遊びに来ている最中、との描写がありますので、新婚1年目という設定の「Murder with Flowers」(『人形パズル』の原型中編)より後、『悪女パズル』より前の事件ということになるようです。
 
ともあれ、この傑作群、なんとか翻訳紹介する機会が得られるとよいのですが。

2008年1月18日 (金)

ホックが!

Crippen & Landru のダグラス・グリーン氏からのメールによると、ホックが突然亡くなったとのこと。

最新のEQMMにも作品が載っていたし、まだまだ頑張ってるなぁ、と感心した矢先だったのですが……ショックです。

2007年6月21日 (木)

A・A・フェア=2人って? おい!

 近頃では僕も時流にならってmixiなぞというものに参加しているのですが(ご存じない方はコチラを)、最近、そこに「A・A・フェアを語ろう!」ってコミュがあるのを発見しました。
で、そのメンバーなんですが、2人…………って、おい!(^^;)(^^;)(^^;)

いいのか? これでいいのか? 本当にいいのか? おい、フェアだぜ。
古い話で恐縮だけれど、パソ通時代、NiftyのFSUIRIのミーハーの部屋じゃあ、スタウト、ライス、ピーターズなんかと並んで必読/オススメの筆頭作家だったはずなのにぃぃぃ!(いかん、落ち着け(^^;))

………考えてみると、そもそも「E・S・ガードナー」コミュが存在しないこと自体???ですね(「弁護士ペリーメイスン」つうコミュはありました。TV番組のコミュですね)。かつてあれほどの存在感のあったペリー・メイスンの文庫本も、最近ではすっかり見かけなくなってますが、読まれていないんですか? 面白いのに。
(ためしにBK1で検索したらハヤカワ・ミステリ文庫のガードナーは「片目の証人」「怒りっぽい女」「おとなしい共同経営者」の3冊でした。早川書房のサイトではポケミスの8冊しかヒットしないし……)

ガードナーっていうのはクリスティやクイーン(それにフランシスやマクベイン)と並ぶ定番作家で、絶対に入手困難になることのない作家なんだと信じてたんですが………こんなことだと、いつの日かフランシスもマクベインも新刊書店じゃ手に入らない、なんて日が来るのかも知れないなぁ………

とはいうものの、僕自身は「A・A・フェア」コミュに参加しようか、どうしようか迷ってます(^^;)。実のところ、フェアは読んでないものの方が多いし、20年くらい読み直してもいないから全然覚えてない……(^^;)。うーん、いっそこの機会に原書で読み直すとかしてみるか(^^;)?(それもいいかも)

(それに、実は……mixiあたりでお気楽に「ミステリ好きです」とかいってる若い人のコミュに、あんまりおじさんくさい(しかもちょっと濃いめの)ミステリ者が顔を出すのも顰蹙かなぁという遠慮もある(^^;)……っていうのは、やっぱ、内緒にしておこう)

こんな状況を憂える有志の方、どうか「A・A・フェア」コミュに入ってあげて下さいな。

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