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2016年9月 9日 (金)

パトリック・クェンティンの短篇

パトリック・クェンティンの短篇作品リストを整理しました(コチラ )。
 
クェンティンの短篇の多くは雑誌に掲載されたきりで単行本にまとめられてはいません。いや、それどころか、短篇作品に関しては情報も少なく、全貌はいまだ霧の中といった状態です。上記のリストは、現時点では最良のものだと思いますが、まだまだ埋もれた作品が眠っている可能性があります。
 
翻訳されている唯一の短編集『金庫と老婆』(The Ordeal of Mrs. Snow)を読んでおられるならばとっくにご存じのことでしょうが、クェンティンは短篇も抜群に面白い作家です。
悪意に満ちた、と言いたくなるほど冷酷な視点で人間の真実を暴き出す短篇群の切れ味はどうでしょう。そして、唯一の中編「金庫と老婆」は、金庫に閉じ込められた老婆が脱出できるかどうかを描いたヒッチコックばりのサスペンスの快作なのですが、実はその構造は、仮説がたてられ新証拠によって否定されるというステップが繰り返される典型的な多重解決ミステリと同じであり、中編の長さの中に長編5冊分くらいのアイデアが詰め込まれている中身の濃い作品で、パズラーファンも必読です。
 
ミステリマガジンや別冊宝石などで翻訳された中編・短篇も傑作・快作ばかりです。なかでも「ダイヤのジャック」「大晦日の殺人」「他人の毒薬」あたりは、なんとか入手して目を通されることをお勧めします。宣伝になってしまいますが、トラント警部補の活躍するショートショートを集めた「ティモシー・トラントの殺人捜査」やトラントとのデビュー中編「ミセス・ヴァン・ホーテンの秘密の仕事」も、密度の高いパズラーで、満足度は高いはず。我が翻訳道楽で現在も入手可能ですので是非。(翻訳道楽の作品リストはコチラ
 
いまだ翻訳されていない作品も、私が読み終えた「This Way Out」「The Wrong Envelope」「Passport for Murder」「The Scarlet Box」などの中編は出来が良いももばかりでした。既訳の中編同様「トライアル&エラー/多重解決」の構造に思いつく限りのアイデアをぶち込むというスタイルなのに、ここまでテイストの違うヴァリエーションが作れるのかと、感心させられてしまいます。どれもたっぷり楽しめたので、クエンティン掲載誌のコレクトにどっぷりとはまってしました。
本国でも、つい先頃、ダルース夫妻の登場する短篇を集めた『The Puzzles of Peter Duluth』という2冊目の短編集が刊行されましたが、まだまだ雑誌に掲載されただけで単行本に収録されていない作品が大量に埋もれているので、結局、掲載誌を入手するしかないのです。
現在、ようやく制覇率8割といったところ……。
 
余談になりますが、先日ようやく入手した「Hunt in the Dark」という中編はダルース夫妻ものでした。The FictionMags Indexの情報でも《Duluth》もの扱いされていませんし、『The Puzzles of Peter Duluth』にも収録されていません。現物を入手し、冒頭に目を通してようやくわかった事実です。こういうことがあるから、現物で確認しないといけません。ちなみに、結婚18ヶ月後で、戦争はまだ始まっておらず、2人でコニー・アイランドに遊びに来ている最中、との描写がありますので、新婚1年目という設定の「Murder with Flowers」(『人形パズル』の原型中編)より後、『悪女パズル』より前の事件ということになるようです。
 
ともあれ、この傑作群、なんとか翻訳紹介する機会が得られるとよいのですが。

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