無料ブログはココログ

«  小鷹コレクションの現状(2016.9.10) | トップページ | クレイグ・ライスの短篇 »

2016年9月17日 (土)

「American Murders」!!

「American Murders」のリストを整理しました(コチラ )。
 
…………ところで、「American Murders」って何?ww
 
「American Murders」……アメリカの著名犯罪を集めた犯罪実話本のタイトルかと思うところですよね。でも、ここ「海外短篇ミステリの話をしよう」では、全然別の特別な意味を持った言葉として使いたいと思います。
 
TVの出現によって日常生活がすっかり様変わりししまう前、映画やラジオと並んで、中流階級以上の市民の日常の娯楽の一角を、週刊/月刊のスリックマガジンが担っていたのだそうです。
現代を生きる人間が、毎週お気に入りのTVドラマを楽しみにしているように、週に一度、あるいは月に一度郵送されてくるスリックマガジンに掲載されている小説を待ち焦がれていたのだとか。

スリックマガジンといえば「The Saturday Evening Post」「Collier's」などが有名ですが、それらと同等かそれ以上の人気と歴史を誇った月刊誌に「The American Magazine」があります。1906年創刊の名門スリックマガジンだったのですが、残念なことに1956年に終刊を迎えてしまいました。

American_magazine01
 
American_magazine03
この「The American Magazine」は1930年代半ば頃から、読み切りのミステリ・ノヴェラを掲載するようになりました(ノヴェラってのは長めの中編、あるいは短めの長編のこと)。そのコーナータイトルは「The Month's American Mystery Novel」でした。

American_magazine02

1986年にジョン・L・ブリーンとリタ・A・ブリーンの共同編集で傑作集アンソロジーが出ました。そのタイトルが『American Murders』。巻頭でブリーンが詳細な解説を書き、巻末には情報量たっぷりの作品リストが付されていて、資料性も高い。

American_murders

この本のインパクトがあまりに強いので、「The Month's American Mystery Novel」のことを「American Murders」と呼ぶことにしようじゃないか、という次第。

はい、私の勝手な命名ですけど、何か?
 
スリックマガジンは他にもたくさんありますし、30年代~50年代(TV時代以前ということですね)は、どこのスリックマガジンも競い合うように様々な娯楽小説を掲載したものです。でも、ロマンス小説、冒険小説、ユーモア小説などさまざまなジャンルがある中で、「The Month's American Mystery Novel」(今月のミステリ長編!)と銘打って毎号ミステリ・ノヴェラを掲載していたのは「The American Magazine」だけ。
 
実は同時期、Pulp Magazineの世界でも毎号目玉となるノヴェラを掲載するミステリ誌は多かったのですが、そうは言ってもスリックとPulpの違いというのは、とてつもなく大きい。
なにしろ原稿料が全然違います。「a cent a word」なんて言いまして、Pulp Magazineの原稿料は最低レベルで1語1セント、最高額を誇った「Black Mask」で1語3セントでした。仮に1語2セントで20,000語のノヴェラを書いたとしたら原稿料は400ドル(1950年の1円=360レートで、消費者物価指数を勘案すると現在の100万円くらい……って、悪くはないじゃんww)なんですが、ブリーンの解説によると「The Month's American Mystery Novel」の原稿料は1作品につき3,500ドルから4,500ドというとこだったようです。10倍だ!(現在の日本円で……1000万以上!!! 乱歩賞かよ!ww)書き手の気合いも違ってくると言うものです。
 
今回作成したリストを見ていただけば分かるのですが、翻訳されているものだけをみても、ラインナップは豪華というしかない。ヒュー・ペンティコーストの「もの云う子牛」「マンハッタンの殺人」「明日は昨日」、パトリック・クェンティンの「ダイヤのジャック」「大晦日の殺人」「死はスキーにのって」、ヘレン・マクロイの「人生はいつも残酷」「外の暗闇」「ふたつの影」「人殺しは誰でもする」などなど、傑作中編として名高いものばかりです。「ミステリマガジン」の前身である「日本版EQMM」を読んでいた方なら、フィリップ・ワイリーやゴードン・ギャスキルの名前も懐かしいでしょう。そして、スタウトのネロ・ウルフものの中編は、「The American Magazine」が廃刊になるまで、ここでしか読めない看板シリーズでした。
 
未訳の作品では、クェンティンの[Passport for Murder]、[Death Freight]、[The Scarlet Box]あたりがまずは気になるところでしょうか(私(=米丸)は[The Scarlet Box]だけ既読です。イタリアを舞台にした観光ミステリなのですが、クエンティンらしい中身の濃い傑作!)。他にも、ティモシー・フラーの[The Second Visitor]は『ハーバード大学殺人事件』『ハーバード同窓会殺人事件』のジュピター・ジョーンズが活躍する唯一の中編です。この他、日本ではなじみの薄い作家も多いのですが、確実に楽しめる作品ばかりのはず。1作1000万円の原稿料は伊達じゃないはずですからw。
 
いずれにせよ、「ミステリマガジン」「別冊宝石」などに翻訳されたきりで埋もれてしまっている作品、まったく翻訳もされていない作品が山ほど残っているのです。
 
というわけで、
「American Murders」は宝の山(結論w)

«  小鷹コレクションの現状(2016.9.10) | トップページ | クレイグ・ライスの短篇 »

ミステリの話題」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/213706/64215838

この記事へのトラックバック一覧です: 「American Murders」!!:

«  小鷹コレクションの現状(2016.9.10) | トップページ | クレイグ・ライスの短篇 »