2012年4月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
無料ブログはココログ

« 『The Monkey Murder』スチュアート・パーマー ☆☆☆★ | トップページ | スチュアート・パーマー ミス・ウィザーズもの未収録分まとめ読み ☆☆☆ »

2008年12月 8日 (月)

『Hildegarde Withers : Uncollected Riddles』スチュアート・パーマー ☆☆☆★

Crippen & Landru という出版社から、雑誌などに掲載されたまま埋もれて忘れ去られている作品を発掘して本にしようという最高にいかした「The Lost Classics Series」というのが出ているんですが、そのうちの1冊です。米丸的にはパーマーは「超」のつく大物作家なんで(ええ、普通人の感覚とずれているのは自覚しております(^^;))、実際に手にしたときの興奮は忘れられません。目を通してみると、それまでに読んでいた作品群に劣らずレベルの高い娯楽作ばかり。☆☆☆★ですね。ミス・ウィザーズものの短編はまだ相当数が埋もれているはずだといいいます。いつか読める日がくるといいんですが……。

[ The Riddle of the Dangling Pearl ] ◎

:メトロポリタンをモデルにしたとおぼしき美術・博物館から、目玉の展示品であるチェリーニの杯が盗まれる……窃盗計画は手の込んだ巧妙なもので、感心することしきり。ミス・ウィザーズのトレードマークである傘もうまく小度具として生かされているし、犯人に気づく手がかりも教師という本業を生かしたもの。結構有能なパイパー警部の指揮ぶりもしっかり描かれていて個人的には嬉しい。いろんな意味で中身の濃い佳作。(「翻訳道楽」にて翻訳しました)

[ The Riddle of the Flea Circus ]

:タイトルは「ノミのサーカス」だけれど、舞台は普通のサーカス。ノミのサーカスはその一部の出し物だというだけのこと。あまり本筋にかかわってくるわけでもないので、このタイトルは看板に偽りありかな? ミステリ的には薄味だけれど、サーカスものらしくスラップスティックな展開が楽しい作品。(「翻訳道楽」にて翻訳しました)

[ The Riddle of the Forty Costumes ] ◎

:四〇着も舞台衣装をもっているダンサー兼ダンス教師が行方不明になり、心配した教え子たちが警察を訪ねる。たまたま居合わせたミス・ウィザーズは……てなお話。事件の舞台がカーネギーホールのあるビルの上階にあるダンススタジオだってのも興味深い。そういうビルなんだぁ、って感じで読みました。このビルの構造を生かした、ラストのサスペンスシーンはなかなかの見物。タイトルがこの作品の核となるミステリ的趣向を暗示しているあたりも、実にセンスがいい。「××の××場所」トリックもグルーサムで印象的。(「翻訳道楽」にて翻訳しました)

[ The Riddle of the Brass Band ]「ブラスバンドの謎」○

:セント・パトリック・デイの警察のパレードはニューヨーク名物のひとつ。そのパレードが通り過ぎる街角に一人の男がビルから落下する。男は小さな出版社の社長で、事の起こったときは奥の社長室に一人きり、たった一つの出入り口の外には秘書と数人の客が待っていた。自殺としか思えない状況だが……てな話。警察のパレードという背景はお飾りのようなもので、プロットには関わってこない。それより最近日本でも問題になってきた「協力出版」だの「共同出版」だののいかがわしい形態の出版(作者に費用を負担させて本を出すが、きちんと営業したり取次を通したりするという保証はない)が題材になっているところが、ちょっと面白い(もっとも日本とアメリカじゃあ出版物の流通形態が全然違いますんで、そういう部分の勉強の役にはたちませんがね(^^;))。密室ものとしても、けっこう手際の良い手口だと思う。手がかりが非常に明解なので、すぐわかっちゃう人も多いかも。

[ The Riddle of the Blueblood Murders ]

:連続する愛犬殺し。その解決のためにミス・ウィザーズはセントラルパークで開催される大規模なドッグショウに乗り込む……凶器の隠し場所にちょっとしたアイデアがある。隠し場所トリックとしてはたいしたことはないのだけれど、ビジュアルなイメージを思い浮かべてみるとなかなか笑える。ミステリとしての核となるアイデアが、同時にくすぐりどころにもなっているというのが、このシリーズらしくていいなぁ。今回はオスカーが意外な頼もしさを発揮してミス・ウィザーズの危機を救います。この二人の中年カップルぶりはとてもいい感じだと思う。(「翻訳道楽」にて翻訳しました)

[ The Riddle of Forty Naughty Girls ] ○

:今回の舞台は下世話なバーレスクショーのかかる小屋で、ヒロインは肌の露出を売り物にする歌姫だし、彼女に言い寄る小屋のマネージャーはケチなチンピラギャング。その桟敷席で男が射殺されて……てな話で、小屋の裏舞台の描写が興味深い。例によってミステリ趣向も手際よく組み込まれているし、ラストではミス・ウィザーズとオスカー警部が一緒に危機一髪のピンチに落ちいるサスペンスフルな展開もある、てな具合でサービスたっぷり。ピンチを切り抜けるアイデアもミス・ウィザーズらしくていい。(「翻訳道楽」にて翻訳しました)

[ The Riddle of the Hanging Men ]「首吊り殺人事件」◎

:ドナルド・ノードを有罪と断じた陪審員たちが次々と首を絞められ吊されて殺害される。当のノードは死刑執行を待つ監獄で首をつって自殺していた。殺人犯は復讐を望む愛人か、それとも弟か……てな話。今回は陪審員制度が題材になっている。陰湿な題材のせいもあってかユーモアはやや控えめ。ミス・ウィザーズの捜査方法や真相につながる手がかりにもこれといったアイデアはなく、ミステリ的にはいまひとつかも。でも、ラストでこの題材ならではの意外な犯人・印象的な動機が明かされていて、それだけで十分佳作となっている。陪審員制度にはそういう問題もあるんだねぇ、という意味で勉強にもなりました。

[ The Riddle of the Marble Blade ]「大理石の刃の謎」◎

:セントラルパークでワシントン像の除幕式が今回の舞台。幕を落とされた像の腕に死体が乗っていた。被害者は像の作者の彫刻家だった……てな話。犯人は、はっきりとネタ明かしされているわけではないけれど隠されてもおらず、読者にはわかってもかまわないというスタンスで、読ませどころはヒロインのスリリングな追跡行。でも、そんな中にも気の利いたミステリ的アイデアをきちんと詰め込んでくるところが、この作者らしい良心的職人仕事というものなのでしょう。奇妙な凶器と犯人の動機も面白いし、なかなかよい出来なのでは。

[ The Riddle of the Whirling Lights ] ○

:今回はプラネタリウムの上演中の殺人。トニー・ラシターはロスの大学からクリスマス休暇でニューヨークへと変える途次、シカゴで長距離バスから列車への乗り換え時間を利用して、出会ったばかりの美人とプラネタリウムを鑑賞することにした。ところが暗闇の中でこの娘が刺殺されてしまい、トニーが殺人の容疑を受けることに……てな話。わざわざミス・ウィザーズをフランチャイズを離れてシカゴまで出張させるということは、当時プラネタリウムは他の都市にはないシカゴだけの名物だったんでしょうね。シカゴでの事件となればマローンの登場を期待してしまうところですが、それはさすがにないか(^^;)。この作品は1934年初出で、ミス・ウィザーズがマローンと出会う「Once Upon a Train」は1950年なのでした。その代わり地元シカゴの地方検事がユニークなキャラクターで面白い。Whodunitとしても良くできているし、Howdunitではプラネタリウムならではの小道具をうまく使っているあたりが、さすが。

[ The Riddle of the Jack of Diamonds ]

:アパートの階下の住人を殺害したとして逮捕された夫の嫌疑を晴らしてくれと泣きついてきた若い妻。ミス・ウィザーズは「誰かを贔屓したりはせずに、真実をつきとめるわ」といって引き受ける。被害者は高級アパートで賭場を開いていたらしいことがわかり……てな話。典型的な意外な犯人で、典型的すぎて誰でもすぐ見当がついてしまいそう(^^;)。事件が解決したあとのミス・ウィザーズの決着の付け方は、個人的にはちょっと意表を突かれた。そうか、こうきますかぁ。うーん、どうなんだろ、悪いともいえないんだけれど、いまいちすっきりもしないなぁ。

[ The Riddle of the Tired Bullet ] ○

:公的基金の横領を暴く裁判(なんだと思うけど、実は適当に読み流しているので誤読しているかも(^^;))を控え、重要証人である元上院議員の秘書アーネスト・ホーキンスの死を願う人間は片手では数え切れないほどだった。護衛を求めるホーンキンスの妻にパイパー警視は私立探偵を雇うことを薦めるが……てな話で、もちろんホーキンスは殺されてしまう。大物容疑者たちを相手に地方検事は腰が引けているし、いつになく神経質になっているパイパーはアスピリンをむさぼり食らう。一人ミス・ウィザーズだけがのほほんといつもどおりに好き勝手に振る舞って現場を荒らし回る、というわけで、緊張感もありユーモアもありで、退屈するヒマはなし。タイトルにもある弾丸の件がミステリとしての肝なのだけれど、これはわりとシンプルなんで、真相はわかりやすいかな。にしても、決定的証拠を手に入れるために、ミス・ウィザーズの打った手ときたら……(^^;)(^^;)そんなことしていいんですか、×××として?

« 『The Monkey Murder』スチュアート・パーマー ☆☆☆★ | トップページ | スチュアート・パーマー ミス・ウィザーズもの未収録分まとめ読み ☆☆☆ »

読了記録」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/213706/43254025

この記事へのトラックバック一覧です: 『Hildegarde Withers : Uncollected Riddles』スチュアート・パーマー ☆☆☆★:

« 『The Monkey Murder』スチュアート・パーマー ☆☆☆★ | トップページ | スチュアート・パーマー ミス・ウィザーズもの未収録分まとめ読み ☆☆☆ »