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2008年11月17日 (月)

『Mr. Campion: Criminologist』マージェリー・アリンガム ☆☆☆★

《ネタがないので、過去の読了メモを公開してます(^^;)》

長編リストにものっている長めの中編 [ The Case of the Late Pig ] が収録されている。これがなかなか読みでのある佳作で、他の短編もつぶぞろい。☆☆☆★はいける。でも、やっぱアリンガムはパズラー作家ではない、ということがよくわかりました。

[ The Case of the Late Pig ] ☆☆☆
:アリンガムの作品の中ではパズラー性の高い傑作として評価の高い作品……キャンピオン氏の学生時代の友人、通称「PIG」が死んだと知らされ郊外の葬式に赴いたキャンピオン氏。その葬式から半年ほどのち、事件の解決に手を貸してほしいと頼まれて出かけていったキャンピオン氏は、そこで「PIG」の死体を目にする。では以前の葬式で死んでいたのは誰だったのか?……見事にキャッチーな発端。確かにパズラー的はったりの効いたシチュエーションで、紆余曲折する展開は退屈させないし、当然そうこなくっちゃね、という感じの美しい解決にも納得がいく。ではあるけれど、実はキャンピオン氏と老従僕ラグのやりとりの方が面白かったりするんだよね。この作品の中でのキャンピオン氏は「叔父さん」というよりも浅見光彦=寅さんぽい役どころで、そこも面白い。やっぱアリンガムはコージー・ミステリとして読まないと評価を誤るんじゃなかろうか。

[ The Case of The White Elephant ]「屑屋お払い」☆☆★
:知り合いの若い娘の悩み事の相談相手となったキャンピオン氏は、それをきっかけに大がかりな窃盗団の秘密を暴き出す……てな話なんだけれど、パズラー的な部分(盗品の発送方法とか悪党たちの秘密の通信方法)はたいしたネタじゃあない。むしろ威厳ある伯爵夫人の意外な活躍ぶりとか、キャンピオン氏のいつもどおりの「叔父さん」ぶりなんかが微笑ましく楽しめる。

[ The Case of The Man with the Sack ] ☆★
:クリスマス・パーティに招かれたキャンピオン氏が悪党の企みを挫き、虐げられた若い恋人たちを助け、善人たちは幸せなクリスマスを迎える、というお話。ただそれだけで、なんのひねりもありゃしない(^^;)。パズラー的な要素なんてほとんど皆無です。でもアリンガムに期待するのってこういう話なんだよね。

[ The Case of The Border-Line ]「ボーダーライン事件」☆☆☆☆
:有名なショートショート。パズラーとしてはアリンガムの最高傑作かも(^^;)。不可能犯罪が、ささやかな人情の機微によって鮮やかに説明されるところが実に美しい。英国ミステリってのはこうでなくちゃいけません! この手の解決を腰砕けと感じる人もいるかもしれないけど……。

[ The Case of the Widow ] ☆☆★
:キャンピオン氏は知り合いのワインセラーの相談を受けて、ヴィンテージワインの偽造に関わる巧妙な詐欺を暴き出す。悪党の仕組んだ罠の手の込みようには感心させられる。ただし、「子供向け芸人」うんぬんに関わるパズラー的趣向はいささか拍子抜け。アリンガムにパズラーを期待してはいけない。冒頭でオーツ警視をメロメロにさせてしまうお嬢様がちょっと面白いんで、もっと出番があれば嬉しかったかな~。

[ The Case of the Pro and the Con ] ☆☆★
:キャンピオン氏危機一髪のスリラー編。パズラー要素は皆無。キャンピオン氏はあいかわらず万人の叔父さん役。今回は、旧知の老婦人の古い邸宅を法外な値段で短期間借りた人物がキャンピオンの知っている悪党だったことから、植民地人(アメリカ人のことだよなぁ(^^;))相手の詐欺を嗅ぎつける。助けられる老婦人がなかなかいい味を出していて、最後のいささか強引過ぎるくらいのハッピーエンドも効果的。後味のいい話だ。

[ The Old Man in the Window ]「窓辺の老人」☆☆☆
:某名門クラブの窓際の席にいつも座っていた名物の老俳優が九〇歳の誕生日を迎える直前に息を引き取った……と思いきや、故人を悼んでうわさ話をするクラブのメンバーの前に当の老優が元気な姿を現す。死者を看取り死亡を確認した若い外科医は面目と信用を失って……というお話。HOWDUNIT、WHYDUNITのどちらの面から見ても良く出来た佳作パズラーなのだけれど、この短編集の目玉である [ The Case of the Late Pig ] とネタがかぶってしまうので損をしている。

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